Mystara – tracks on your face

人気(ひとけ)のある場所だからといって必ずしも安全とは限らないようです。

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人里離れた場所をうろつけば、いつまた狼男に襲われないとも限らない。
エルフの里に身を落ち着けるには、粗野過ぎる生き方をしてきている。
人間の酒場に長居するほど人混み好きではない。

かくしてImryllは大抵、木々の合間か酒場『Royal Oak』の屋根の上でのんびりしがちでした。
この日の晩もいつものように棟木に腰かけていたところ、カチャカチャと陶器がこすれ合うような音をさせながら何者かが彼女に近づいてきました。
四肢と尻尾、羽根が骨だけのその女性は青い髪をなびかせ、むせかえるほど甘ったるい香りを辺りに漂わせていました。
ぎょっとしたImryllが声をあげる前に彼女は口に骨の指をあて『シーッ』という手振りを示すと、眼下の何かを目で追いかけていました。

尻尾と羽根の形だけを見れば竜族のようにも見えましたが、女性は竜族のまとう神聖なオーラとはかけ離れた、いや真逆の禍々しいオーラをまとっていました。ゾンビの一種でしょうか。しかし骨部分以外、つまり顔と胴体は全く損壊していません。
捕って喰われるかと思わず腿の短剣に手を伸ばしかけていたImryllでしたが、女性が自分に危害を加えてこないことを確認し手の位置を元に戻すと座ったままの体勢で煙突の方へにじり下がりました。

『あんた体が悪いみたいね、エルフ。医者にでもかかったらどうなの』
『別になんともないわ…』顔面の青あざを指さし、Imryllは答えました。『…”これ”のせいで、そう思ったのならね』
『そうなの?』女性の声からは同情心などはかけらも感じられず、冷たい響きを保っていました。『足も悪いみたいじゃないの』
Imryllが座ったままにじり下がったのでそう思ったのでしょうか。
『どこも悪くないわ…それに、醜く見えるからって誰もかれも傷やあざを治したいと思っているわけじゃないのよ』
自らが健康体であることを示すため、Imryllはけだるい仕草でゆっくりと立ち上がりました。脛についた埃を払い落とします。
『ほらね。誰かが急にやって来たからといって飛び上がって立つほど几帳面じゃないのよ』

『好きにやればいい、気の毒な命に限りある者よ』
こういう言い回しをするということは、不死の種族なのでしょうか。女性は煙突の石を背にしたImryllに近づいてきました。
『醜いなんて誰も言っていない。見た目痛々しい印象は与えるだろうけれどね。あんた、ダメージを時間をかけて癒すのが好きなの?』
『そういうわけじゃないわ、敢えて不具合を抱え続ける理由があるってことよ』
顔の痣は狼男に襲われるより前に出来たものです。自分の過去を探る上で道標となるこれらの痣を、Imryllは消すつもりはありませんでした。勿論目の前に立つ初対面の女性にそこまで詳細に説明する気は毛頭ありません。
女性が近づいて来たせいで甘い香りもいっそう強くなりました。Imryllはマスクを引き上げます。
『マスクをつけているのに、私の鼻孔にあなたの匂いが飛び込んでくるわ。砂糖袋か何かに飛び込んできたばかりなのね』

『まあ人にはそれぞれ理由があるってことね』女性は薄ら笑いをその顔に浮かべました。
『砂糖袋になんか飛び込んでやしないわ。これは死の甘い匂いよ…もし砂糖だったら、皆苦しい思いをせずにすむでしょうね』
『なら沢山吸い込まなくて良かったわ、死の匂いを胸一杯吸い込んだら体に良さそうとは言えないもの』
Imryllは改めてマスクを引き上げました。この死神のような女性の前を早く離れるかそれとも居残るか、決めかねたまま会話を続けています。
『さっきから、何を見ているの』
Imryllは女性の目線の先に立つ男性を眺めながらたずねました。

『衛兵を見てるのよ。人間の女王の伴侶になったばかりのあいつは、いまや王と同等の立場とも言えるわ』
『ふうん、そうなの….私は世事に疎いので、よく知らなかったけれど』
Imryllは煙突石から少し背中を離すとまっすぐに棟木の上に立ち、眼下を見下ろしました。
『じゃあ、あなたはあいつ…人間の王が隙を見せた瞬間に飛びかかろうと、機会をうかがってるってわけなのね』

『そんなつもりはないわ』女性は笑いながら身を屈めました。屋根の下へ飛び降りようとしているようです。
『あいつがあたしに乱暴に振舞う理由を与えた場合にそなえて、監視していただけよ…そろそろ遺体安置所に戻る時間だわ』
女性はそう言い残すと、現れた時と同様カチャカチャと音を立てながら屋根を滑り降り、衛兵の立っている辺りからの死角に着地し墓地の方角へ駆けていきました。

//////ICここまで//////

文字通り立ち話のみで終わったImryllには知る由もありませんが、頭上のroleplay titlerによると骨女性の名はAra、齢は死語506歳のドラコリッチ、つまりアンデッドの竜でした。身にまとう悪しきオーラは周りに冷気を漂わせ、頭痛がするほどの甘い死の匂いを振りまいている…という設定です。
ドラコリッチはMystaraの基本種族(人間、エルフ、オーク、人魚など)ではないため、彼女はAdminの許可を得てからroleplayをスタートさせています。

Mystara – tracks on your face (complete chat log)

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~ by Meg Ronmark on August 17, 2011.

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